2月2日
 今日は姉さんが帰ってこなかった。
 そろそろサーヴァントが出そろった頃だろうから、何所かで戦闘でもしているのだろうか。今ここで死なれては困る。まだまだ計画は最初の難関を越えたところだ。


2
月3日
 今朝は驚いた。
 先輩の家に姉さんがいた。
 こっそりとライダーに聞いてみればなんと先輩と同盟を結んだらしくしばらく泊まり込むつもりだとか。
 藤村先生が騒いでいたが姉さんにうまく丸め込まれる形になった。
 素人同士が組んでも危険度が増すだけだと思うのだが。

その晩は姉さん、ライダー、セイバーさん、藤村先生といっしょに先輩の家に泊まって同じ部屋で寝た。終始藤村先生がライダーとセイバーさんに話しかけていたので必然、私は姉さんと話し込むことになった。もしかしたら藤村先生そうなるようにしたのかもしれない。

藤村先生がいるので話題はたわいもない思い出話だが、姉さんの不興を買わぬよう吟味して恐る恐るという感じで無駄に疲れた。うっかり久しぶりに先輩と姉さんが一緒にいるのを見て、二人が仲たがいしだした頃を思い出した、と言ってしまった時の姉さんの顔はなかなかのものだった。そのほかのことは恥ずかしくてここにも書けない
 そういえばあの頃、姉さんはよく私を打った。
 色々とストレスが溜まっていたのだろうが蟲蔵に比べれば、まだしもマシだった。なにしろ謝っていればその内に止めてくれるのだから、私としてはむしろ姉さんが刃物を持ち出さないかと、密かに期待していたりもした。そうすれば、全て終わるというのに。姉さんにしてもそこまでする気はないのが少しばかり残念だった。
 ただ、謝っているうちに姉さんの方が泣きそうになるのはよく分らなかったが。
 やがて、それが先輩の知るところになって先輩は姉さんを殴った。グーで。
 双方、殴るのも殴られるのも初めての事だったのだろう。
 しばらく固まっていたが今度は姉さんが先輩を殴った。やっぱりグーで。
 そのときはそのまま別れたが、なぜかそれから姉さんは私を打たなくなった。
 結局姉さんにとって私に対する興味とは、その程度でなくなるものだったのだろう。
 考えてみれば、今回の計画で姉さんだけは殺す必要はないのかもしれない。
 いやいや、結局姉さんも間桐なのだ。
 だったら、例外にするわけにはいかない。
 仲間はずれは姉さんの最も嫌がる行為だ。うん。
 間桐邸に設置した基点もそろそろ定量になる。
 御爺様に気付かれるかとも思ったが聖杯戦争の行方が気になってそれどころではないらしい。


 2月4日
 今朝もまた驚いた。
 朝食のときは何ともなかったのに夕食の時にライダーの左腕が無くなっていた。
 よほど激しい戦闘をしたのだろう。その割にライダー以外の3人に怪我らしい怪我がないのが不思議だが。
 現界に支障を来すほどではないが戦闘の際には明らかに不利になるだろう。
 あと二回ライダーは死ねるがそれでも死なないに越したことはない。
 計画は今のところ順調だ。

それはそれとして今朝の通学時の藤村先生の奇行には驚いた。

それ以上に驚いたのは姉さんが自棄気味とはいえ学園まで私の手を引いていったことだ。誰かに見とがめられそうになる度放しては掴んでを繰り返していたが校門を通り抜けるまでそれを続けていた。私はされるがままであったけれど、姉さんの手の大きさと奇妙なくらいの冷たさがまだ、残っている。

 

2月5日

三日目ともなるとお互い慣れてくるのかそれなりに姉さんのぎこちなさもとれた朝食だった。先輩も一緒ということで昨日のようなことはなかったが姉さんが手をふらふらとさせているのは笑いを誘った。

 今晩ライダーがやられ、マスター権が私に戻ってきた。
 聞けば姉さんたちは逃がした後だというから今頃は教会に匿われていることだろう。

 姉さんのライダーに対する依存は私の目から見ても異常なほどであるので今頃はいい感じに絶望しているだろう。先輩がそばにいるだろうが、以前ならともかく今なら大した慰めにはなるまい。いい傾向だ。
 ふと、ライダーに私が命じれば姉さんを殺すかどうかを聞いてみた。
 答えは是だった。
 ライダーの優先順位の中でなぜか私はだいぶ上の方らしい。普段を見る限り姉さんの方を好いているように見えるのだが。
 その後、鮮血神殿の基点の配置が完了した。学校の様に急ごしらえではないのでだいぶ安定したものだ。これなら大丈夫だろう。


2月6日
 今日聖杯戦争が決着した。
 結局姉さんと先輩は生き残った。少し意外だが結果としては良い。

姉さんはあのあと、私に早く死ねと言ったあの金髪の男を神父からもらいうけ再び聖杯戦争に参加したらしい。今日の昼ごろ、胸の中の聖杯のかけらが疼きだした。
 あとでわかったことだがこの時姉さんが擬似的な聖杯になったらしい。
 ライダーを柳洞寺に向かわせ先輩と姉さんを救出する。
 あの男は遠坂先輩のサーヴァントと相打ちになった。
 病院のベッドで眠る姉さんを見ながら遠坂先輩が間桐の家にしばらく世話になりたいと言ってきた。少し考える振りをしてから了承する。姉さんと呼ぶと泣きながら抱きつかれた。少々鬱陶しい。この十一年間、放っておかれたことを私が水に流すとでも思っているのだろうか。
 しかしこれで全て上手く行くだろう。


2月7日
 今日御爺様を殺した。
 遠坂先輩は御爺様の所業を聞くやその体を聖杯戦争で使い損ねたという秘蔵の宝石で打ち砕いた。せっかちな人だ。仕方なく急いで家の外に出てから鮮血神殿を起動する。
 御爺様と蟲蔵の蟲達がドロドロに溶解されてライダーの栄養になった。
 御爺様の断末魔は「死にたくない」だった。とても耳に心地よかった。
 「もう大丈夫」と私を抱きながら言う凛姉さんにつばを吐きかけたくなりながらも計画がうまく運んでいることに微笑みを隠せない。
 私の計画。
 間桐の断絶。
 十一年かけて見つけた私の目的。
 御爺様を殺し
 姉さんを殺し
 間桐邸を壊し
 最後に間桐に染まった私を殺す。
 御爺様は殺した。
 ライダーがいればもはや空っぽになった蟲蔵ごと間桐邸を 跡形もなく壊せるだろう。
 あとは姉さんを殺せばほぼ終わる。
 その後ドロドロになった御爺様は遠坂先輩が片付けた。
 蟲蔵に続く隠し扉も漆喰で塗り固めた。
 確かに御爺様はもはや妖怪の類だったが、人の形をしたものを殺して、その残骸を使い終わった研究材料を扱うように片付ける遠坂先輩をみて、共犯者めいた感情とやはり私の肉親なのだという実感が湧いてきた。それとも魔術師というのはこういうものなのだろうか。
その晩、淫虫の精を吸ったせいか、妙に昂ぶってしまったライダーを遠坂先輩と一緒になだめる。
 ちなみに遠坂先輩は処女だった。
 可愛い。


2月16日
 今日見舞いに行ったついでに姉さんを殺そうとしたら幸せだと言われてしまった。
 これでは殺す意味がない。
 どうしようもない絶望の中で死んでもらわなければ復讐にならない。
 しかし、私の心配をしなくていいから幸せとはどういうことか。
 本当にわからない人だ。
 私は本気なのは分かっている癖に。
 なんで私に対して笑いかけてくるのか。
 首から下が動かないのになんで私を後ろに立たせるんだろう。
 以前から妙なタイミングで怒りだしたりしていたが改めて変な人だ。


3
月14日
 姉さんが退院した。
 約速どおり街に行って1日遊んだ。
 姉さんはまだ車椅子だったがとりあえず上半身は動くようになっていた。
 なにかのゲームのキャラクターをデフォルメしたぬいぐるみを買ってもらった。
 今机に飾ってある。
 正直私には何がいいのかわからない。というか、直球で可愛くない。むしろ不気味だ。

嫌がらせのリハビリかもしれない。
 でも、なぜか目につく処に置いておきたくなった。 

我ながらよく分らない。

明日は奮発して買ったテルモンデのケチャップでオムライスでも作ろう。


6月5日
 姉さんが倒れた。
 すぐに回復したが、調子は悪そうだ。
 やはり、心臓に問題があるのだろう。
 遠坂先輩は最近口を聞いてくれない。
 私がどう思っているか分かってきたのか。
 正直どうでもいい。


10月28日
 姉さんが失明した。
 体はますます衰弱してきているが体に流れる魔力が無理やり生かしているように見える。
 こまった。絶望される前に死なれては元も子もない。
 今日は遠坂先輩が食事を作った。
 何とかの一つ覚えで中華だった。
 姉さんの少し塩を効かせ過ぎる料理が食べたい。


12
月5日
 気がつくと遠坂先輩が間桐邸から居なくなっていた。
 風の噂にロンドンの時計塔に留学したらしいと聞いた。
 魔法使いでも何でも好きにすればいい。
 姉さん一人助けられない癖に。
 先輩はこちらに残っている。

ライダーは自分が負担をかけているかもしれないと座に帰ってしまった。
 姉さんにまだ幸せかどうか聞いてみた。
 少し私からずれたところをみながら幸せだと言った。
 やはり変な人だ。
 



1
月23日
 今日姉さんが死んだ。
 衰弱死だった。
 とても幸せそうに最期は笑って死んだ。
 なんてことだ。
 これでは永久に私の復讐は終わらない。
 相手が死んでしまったら殺せないじゃないか。
 しかも最後に言った言葉が「手を握って」
 なんでそんなことで、しかも先輩だけならまだしも何で私なんかに手を握られて幸せに死ねるんだろう。私のことが姉さんは嫌いなのではなかったんだろうか。それよりも私はこれから何を目的に生きていけばいいんだろう。机のわきに置いてある、姉さんが退院した日に買ってくれたあのぬいぐるみを見ながらそんな事を考える。
 どうしようもない。もう復讐ができないのではどうしようもない。姉さん一人だけ幸せに死んで私がそれを未練に残して死ぬのは嫌だ。仕方ない。死ぬのはやめにしよう。
 なんて人だ、まったく。
 人の計画を台無しにしてくれて。
 姉さんなんか大嫌い。
 バカ。 

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